あの大震災から間もなく1年となります。
特集番組が組まれたり、防災意識を喚起したりと 巷では色々あるようです。
個人的には 自分には何ができるのか、、を自問し続けた1年だったように思います。
復興や震災に関する色々なご批評やご意見等は他の方々にお任せするとして、
3.11に寄せて、、こんな記事に出会いました。
じわじわと感動が心に広がったお話なので 紹介します。
『 ISASメールマガジン 第389号【発行日− 12.03.06】宇宙の電池屋 タクシー・ドライバー』
に掲載された記事を、以下に抜粋させていただきます。
ちなみに、ISASは、はやぶさ(運用終了)、あかつき、イカロスなどの探査機を運用している研究所です。
全文はもう少ししたら
ここで読めます。ぜひ読んでみて!
「東日本大震災で被害にあった 福島の電池メーカーに行った話を、1周年を前に書きたいのですが……」、とメルマガスタッフに話された 宇宙の電池屋こと曽根理嗣(そね・よしつぐ)さんが書かれた記事です。
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(中略)
年の瀬のころ、いわきにいかなければならないと思った。
プロジェクトメンバーとして進捗を確認する必要がある。
どうにか一日を確保した。
現場を前に、会って話したいことはたくさんあった。
ディスカッションを始めると、エンドレス。なんて楽しい時間だろう。
同じ方向性を持っている技術の話は、つきることを知らない。
進捗段階にある現物も確認し、ラインも確認させてもらい、治具も、特殊な装置も見た。
担当としての確信をもって、成果を待てる状態だと感じた。
日が暮れ、そろそろお暇しないと最終の電車が気になる時間になった。
「とても大変な年でしたが、来年がどうか、良い年になりますように。」
僕は、電池メーカを後にした。
とっぷりと日は暮れ、山の中の工場から駅までは、交通手段に難儀をする。
タクシーを呼んで頂き、駅に向かった。
タクシーに乗り込むと、懐かしい抑揚で話しかけられた。
(本当は、郷のお言葉でしたが、関東弁に直します。)
「お客さん、今、あの電池メーカで打合せだったの?
あの電池メーカがどういうメーカか、知ってます?」
「?」
「あの電池メーカはね、はやぶさの電池を作ったんですよ。
お客さん、『はやぶさ』って、知ってます?
イトカワって小惑星に行って、砂を拾って帰ってきたんですよ。
凄い技術ですよね。
その電池を作ったのが、このメーカなんですよ。
電池ってね、とっても大事なんですよ。
解ります?
ないと困るでしょ。
それを作っちゃったんですよ。凄いでしょ。
本当に地震からこのかた大変なんだけどね、でもね、こういう凄いことを
やってのけるメーカが、この街にはあるんですよ。
凄いでしょ。
でもねえ、はやぶさの2号機ってのが今、予算で苦労しているらしんだよ。
とんでもないよね。
何とかして欲しいよ。」
敢えて言う。
これは、作り話ではない。
敢えて言う。
この街は、被災地である。
復興のためには、お金が要る。
その街のタクシーの運転手さんが、はやぶさ2の予算を心配してくれる。
なんてえことだ。
シャイな僕は、まさか
「少しですが関係者です」
とも名乗れず、モゾモゾするしかない。話題を変えようと思った。
「凄いですね。そういえば、この街ってフラガールでも有名ですよね。」
「・・・・・?
ああ〜、フラガールね。
そうそう、あれも、うん、この街だよね。
ハワイアンもさ〜、地震で大変で、でも復活のために頑張ってて・・・。」
フラガールは良い映画だ。豊川悦司さんは、僕の大好きな俳優さんだ。
「12人の優しい日本人」とか、そのほかにも、どんな映画に出たときも、
とっても味のある役者の「演技」を見せてくれる俳優さんだと思うし、その
豊川さんが出ていたフラガールは大好きな映画の一つだ。
その上で、更に敢えて言わん。
「こんな街は、世界のどこにもない!」
「おらの街の電池メーカは探査機の電池を作る凄いメーカだ!」
と、タクシーの運転手さんが、やわら乗客に自慢を始める街なんて、絶対に、
世界の、どこにも、ありえない。
日本映画の中に確固たる成果を残した映画よりも、すんばらしい温泉よりも、
電池の自慢を始めるタクシーの運転手さんがいる街なんて、絶対にない。
本当につらい年だったはずだ。その中で、故郷の復興の予算よりも、
はやぶさ2の予算を心配してくれるなんて、あ・り・え・な・い。
電車を待つ間、僕は駅におかれているポケットサイズの小さな時刻表を手に取った。
何か、手書きで線が引かれていた。なんだろう。
よく見ると、いわき駅から北の駅の名前が、到着時刻が、マジックペンで消されていた。
家内の育った町の名前も、消されていた。
なんとかせにゃあ、いかん。
なさけない。
家族のケアもできない僕の力で何ができるのか、正直、わからない。
僕には、今、目の前の仕事を頑張ることしかできない。
でも、頑張る。
もしもそのことで、街のタクシーの運転手さんを元気づけることができるのなら、
僕は頑張る。
がんばっぺ。
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